キャンプライフの変遷
私のキャンプの旅が始まったのは、学生時代のツーリングキャンプからです。初めて目にしたドーム型テントに感動したのは1985年。設営が簡単で、強風にも飛ばされないそのデザインを見て、「次は絶対にこれを買う!」と心に誓いました。しかし、実際にそのテントを手にするのは、なんと20年後の2006年のことでした。
30代後半になり、バイクもホンダからハーレーへと変わり、ツーリングキャンプからミーティング参加へとスタイルが変わっていきました。当時のキャンプ道具は学生時代のままで、古びた兵式飯盒(はんごう)とガスバーナーを使い続けていました。2010年代半ばにはガスの規格が変更され、使えなくなってしまいましたが、それまでの間、簡素な装備で続けていたのです。
テントだけはキャプテンスタッグのドーム型に変わりましたが、それ以外の道具は最低限のものだけ。「キャンプ飯」なんて言葉はなく、無洗米を飯盒で炊いてレトルトの牛丼やカレーで食事を済ませる。キャンプというよりも、バイク仲間との語らいが主な目的であり、カスタムバイクやアクセサリーを見ながら、いつか自分もカスタムしたいと夢見ていた日々が続きました。
やがて、仕事や家庭、その他の事情で50代目前にはバイクツーリングやキャンプからも遠ざかり、完全にインドアな生活にシフトしていきました。その頃の自分を振り返ると、「人生を無駄にしていたかもしれない」と感じることがしばしばあります。何かをする気力が湧かず、ただ時間を浪費していたように思います。
ある社長との出会いと別れ
私が50歳を迎えたころ、親しくしていた会社の社長が言いました。「最近の君は趣味がない。もったいない人生だ。元気で何でもチャレンジできるうちにやっておかないと、年を取った時に本当に後悔するぞ」と。その時は軽く流していましたが、その言葉が妙に心に引っかかっていました。
しかし、その社長が突然仕事中の事故で亡くなったのです。知らせを聞いたとき、私はただ愕然とし、しばらく何も手に付かない日々が続きました。あまりに早く人生を終える現実に直面し、これまでの「自分の生き方」について嫌でも考えさせられました。しかし、それでも何をする気力が湧かず、惰性で日々を過ごしていました。
コロナ禍での覚醒
そして2020年、世界中がコロナ禍に包まれ、日本も同様に混乱の渦中にありました。外出自粛、マスクの着用が求められる中、私はますます外に出る気力を失い、家でYouTubeを見て時間を潰す毎日が続きました。そんな日々の中、偶然目にしたのが、キャンプブームを特集した動画でした。
「そうか、ソロキャンプなら三密を避けられるレジャーだ!これならできる!」
その瞬間、私の心に何かが灯ったようでした。すぐに物置の隅に眠っていたテントやキャンプ道具を引っ張り出し、点検を始めました。そして、キャンプ関係の雑誌を次々と購入し、最新の道具やトレンドを調べてみると、世の中ではキャンプブームが大きく広がっていることを知りました。
「これだ。今の自分にできることが、ここにある!」
早速、メスティンや焚き火台、炭火焼コンロ、木炭、薪などをホームセンターで買い揃えました。昔と違い、キャンプ場は予約が必要で、飛び込みでは入れない場所が多いことに驚きました。キャンプ人口の増加を実感しましたが、それでも新たなチャレンジへの興奮が勝っていました。
ソロキャンプの再開
2020年3月下旬、数十年ぶりにキャンプ場を予約し、地元のダム湖のそばにあるキャンプ場でキャンプを再開しました。テントを設営し、焚き火を囲んで一人で過ごす時間は、以前とはまったく異なる感覚をもたらしました。昔のように仲間とバイクの話をすることが目的ではなく、今度は自分自身と向き合う時間を持つためのキャンプでした。
焚き火の炎を見つめながら、自分のこれまでの人生を振り返り、そしてこれからの人生について考えました。あの社長が言っていた「後悔しないために今やるべきこと」が、ようやく私にも理解できたのです。
中川流ソロキャンプスタイルの確立へ
こうして再び始まった私のキャンプライフは、以前とはまったく異なるものでした。シンプルな道具で、焚き火を楽しみ、自然と一体になる。このシンプルさこそが、私にとっての「中川流ソロキャンプスタイル」の原点です。キャンプ道具の進化やトレンドには敏感でありながらも、根本にあるのは「自然の中で自分を見つめ直す」というシンプルな行為です。
これからも、私はこのスタイルを追求し続けることでしょう。バイクツーリングからソロキャンプへと進化したこのスタイルが、私の心と体をリフレッシュし、新しい人生のチャレンジへと導いてくれるに違いありません。
コメント