暗闇は聴覚の覚醒?
キャンプ場での夜は長いですね。日が暮れて夕食を食べ終えて、しばし酒を飲んだりして、
仲間ときていたらなんだかんだ話をしてると時間がたちますが、
ソロキャンプとなるとそれが無い。
酒の酔いが回ってさて寝ようかと時計を見るとまだ21時過ぎ。
あたりは他のサイトでキャンプする人たちの灯や話し声だけになり、
話し相手もいない自分は真っ暗なテントの中でなぜか落ち着かない感じで
なかなか寝付けません。
あたりに誰もいないシーズンオフのキャンプともなると、人気(ひとけ)が無く、
真っ暗なうえに、静けさが迫ってくるようで、時々眠れない夜になることもしばしば・・・
心細さと寒さの闇の世界
学生時代に3月の中旬にツーリングで九州に向かって国道2号線を走り続け、
広島県の山奥のキャンプ場に立ち寄った際、誰もいないキャンプ場でただ一人テント
(当時は三角テント)を張って一夜を明かすことになりました。
山中の3月は春ではない。たとえ下旬でも。
キャンプ場を運営している市役所の観光係に連絡し、「今夜キャンプで1泊したいのですが」
と伝えると、係の人は「え!この時期にですか・・・?」と戸惑う反応。
「宿は予約してないし、お願いします」と言うと「そうですか、気を付けてくださいね。」
と電話越しですが変わったやつもいるなと思われている感じがしました。
誰もいない山の中でたった一人の経験は初めて。
それとかつて経験したことが無いほどの寒さが厳しい夜でした。
春のツーリングだったので服装も防寒を考えていなかったので、
この時期の山の中では無謀な装備でした。
持っていた寝袋も春夏用のもので耐寒性は低いものでした。
とにかく持ってきた衣服をありったけ重ね着し、肌着の上に新聞紙や雑誌を挟んで
何とか寒さをしのごうと試みましたが、とにかく寒すぎて眠れない。
結局人間が一番怖い。
テントの中で震えながら眠るどころではない状態の中、あたりは漆黒の闇、
寒いうえに誰もいないたった一人きりの世界。
何か自分一人っきり野生の世界に放り出されたような気分になりました。
そんな中、脳裏を次々と自分自身が危険な状態に追い込まれる場面ばかりが
思い浮かばれて、不安が不安を呼んで、本当に眠れなくなりました。
春先ということは冬眠から覚めた動物が動き出す時期。広島県を含む中国地区は
「熊」は生息していたかな・・・冬眠はしない「イノシシ」が飛び込んできたら
大けがするな。
野良犬も嫌だな、・・・
などと考えていたら、キャンプ場の周りを周回するような道路を自動車が通るらしく、
ライトの光ががだんだん近づいてきました。そのライトが自分のテントを照らしながら
カーブを曲がって通り過ぎていくのです。
テントをライトで照らされている間中、もし車が止まって人が数人降りて、
このテントに向かって歩いてきたらどうしよう。
こんな夜中に人気のない山の中に、車でやってくる人たちって・・・
非合法なことやってる、反社会的勢力?極左暴力集団?何しに来てるのか・・・
そんな場所にいる俺は邪魔者以上に存在自体が奴らにとって抹殺すべき対象では・・・
車はその晩に3回も通過しました。
防衛本能、研ぎ澄まされる感覚器
恐怖とともに防衛本能が働くのか、普段より耳が冴えて自動車の排気音やブレーキをかける音まで
伝わってきます。さらに自動車が通る際の振動まで感じました。
「来るな!停まるな!さっさと通り過ぎてくれ!」と心の中で叫びながらやり過ごしました。
朝日が昇るのが見えた時は「あ~!無事だった、殺されなかった。生きている。」
と心から安堵し、お日様は本当にありがたい。
なんて普段は全然思わないことに感謝したり。
テントから外に出ると、足元で「サクッ」と言う音が・・・?
霜柱でした。道理で寒かったわけだ。
観光係の職員さんお騒がせしました。
大変なご苦労をおかけいたしました。お詫び申し上げます。
朝食を作って食べながらふと思ったのは
「それにしてもこんな山奥に夜中に3回も車が通るなんて、
山の上に何かあるのかな。23時、2時、4時の真っ暗な中でやってきて何やってるんだろう?」
頭の中が疑問だらけのまま、朝9時過ぎに市の観光係にチェックアウトを伝えると、係員さんが
「寒かったでしょう。あんな薄いテントでは辛かったんじゃないですか?」
「え!なんでテントの事までご存じなんですか?」
「昨晩パトロールで観ましたよ。」
三回も通った車が職員さんのパトロールだったとは・・・ご心配、ご迷惑をおかけしました。
たった一人の自分のために。
今でも広島市の観光係の職員さんへの感謝は尽きません。
コメント